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5.噛まない子なのか噛めない子なのか

噛まない子、噛めない子が増えてきたと言われている。
 QOL(Quality of Life)の理念のもと、健康に長生きするためには、健全な咀嚼機能を維持することが重要であり、そのためには小児学童期から成長・発育の観点にたって咀嚼機能を育成していくことが大切であることは、論を待たない。 保育園や幼稚園の現場、小学校の養護の先生方や、学童の健康診断などを通じて、「噛まない子」、「噛めない子」が多くなってきたと、社会問題化してから久しい。しかし、過去に比較して、実態がどうなっているかの、客観的判断はなされていない。また、最近の小中学校での健康診断において、従来より成人の病気と解釈されていた顎関節症が、多く診られる様になったとの報告もある。さらに、東北大学歯学部高齢者歯科の発表にあるように、咬合力の左右非対称性と顎関節症の症状との間には密接な関係があるとも考えられている。そこで、最近の小児・学童の咀嚼機能について、その咬合の状態を正確に測定して、客観的診断基準を明確にすることは、上記の問題点を解決し、厚生省の施策および日本歯科医師会の提唱する「8020運動」の基本精神を前進させるための一助となると考えられる。   
QOL (Quality of Life)の理念のもと、健康に長生きするためには、健全な咀嚼機能を維持することが重要であり、そのためには小児学童期から成長・発育の観点にたって咀嚼機能を育成していくことが大切であることは、論を待ちません。
 保育園や幼稚園の現場、小学校の養護の先生方や、学童の健康診断などを通じて、「噛まない子」、「噛めない子」が多くなってきたと、社会問題化してから久しい。
 そこで、最近の小児・学童の咀嚼機能について、その咬合の状態を正確に測定して、客観的診断基準を明確にすることは重要と考えられます。

保育園・小学校における「咬合圧」の調査
保育園・小学校の歯科検診で採得したデンタルプレスケールの調査結果


調査対象
京都府宇治市立の小学校で、学校歯科健康診断に参加した生徒332名(男:158、女:174)。


調査目的
歯科用咬合圧測定フィルム(デンタルプレスケール)を3秒間きつく噛ませることにより、下記の項目について調査した。
1. 咬合接触状態を把握する。
2. 全歯列の咬合接触面積の大きさを測定する。
3. 咬合力(最大咬合圧、平均咬合圧等)を測定する。
4. 咬合力の重心やバランスの状態を確認する。
5. 混合歯列期の学童の喪失歯(乳歯)の状態と第一大臼歯の咬合力との相関を調査する。
6. 歯牙年齢別、歴年齢別、男女別の咬合力の平均値を算出し、各々の差について比較検討を行う。
7. 不正咬合の状態と、咬合圧の分布状態について調査する。


調査方法
歯科用咬合圧測定フィルム(デンタルプレスケール)を3秒間きつく噛ませることにより、下記の項目について調査した。
1.使用材料:
富士写真フィルム株式会社製の歯科用咬合圧測定フィルム(デンタルプレスケール)滅菌処理済ワックスタイプ
2.資料採得:
口腔内診査の終了した学童に対して、デンタルプレスケールを専用ホルダーに把持して、口腔内に挿入し、約3秒間咬合させた。
3.測定検査:
資料となる全てのデンタルプレスケールの1枚1枚をオクルーザーのスキャナーで読み取り、得られたデーターは全てオクルザー用統計ソフト(DP-Catch)にてパーソナルコンピューター(マッキントッシュ社製 P/M 9500)上で演算し、統計処理を行った。


調査結果
学年・男女別のデータ

接触面数 (歯年齢別)

咬合接触面積 (歯年齢別)

咬合力 (歯年齢別)


う歯と咬合力の相関



デンタルプレスケールの実例

歯列弓全体型と臼歯型
咬合関係による特徴


結論
1. 咬合接触面積は学年が進むにつれて増加した
2. 平均咬合圧の測定では差が認められなかった
3. 咬合力の大きさでは6年生が1年生の倍近くとなり、5年生の時期に男女差が逆転した
4. 咬合力の重心のバランスの対称度は正規分布していた
5. う歯の状態と咬合力の分布状態については、それほど強い相関は認められなかった。
6. 前歯部と臼歯部で、咬合接触面積や咬合力を比較すると、明らかに、臼歯部で優位である。


良く噛む8大効用
「卑弥呼の歯がいーぜ」
学校食事研究会
1.肥満の防止
…満腹中枢が刺激されて必要以上に食べない
2.味覚の発達
…唾液中のアミラーゼやガスチンの作用
3.言葉の明瞭な発音
…言葉の明瞭な発音…歯や顎を鍛え、いつまでも自分の歯
4.脳を発達
…脳への血流が増え、脳を活性化させる
5.歯の病気の予防
…唾液とよく混じり、歯を清潔に保てる
6.癌の予防
…唾液中のペルオキシターゼの抗菌作用
7.胃腸の働き促進
…唾液とよく混じり、食べ物の消化を援助
8.全身の体力向上
…耳下腺分泌物のパロチンの表皮、神経成長作用


5.まとめ
噛まない子なのか噛めない子なのか」