平成13年10月9日
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8:早期治療における治療効果の比較検討

早期治療における治療効果の比較検討を文献でおこないます。
A.早期治療(乳歯列期と混合歯列前期)における比較検討
Removable Mandibular Retractor を使用
機能的矯正装置を使用した、乳歯列と混合歯列期での比較検討
乳歯列期に早期治療をした方が顎態の良好な改善が得られるとの結論です。

B.早期治療(混合歯列前期と後期)における比較検討
Chin cup を使用し7歳群と11歳群との比較は下記のとおりです

1) チンキャップによる治療の初期段階においては、下顎の成長方向は後下方・下方に転換していった。年齢に関係無いが、若い程、成長方向の後下方への転換が著しい。
2) 7歳群は成長が終了するまでに、キャッチアップ様の下顎骨の前方移動が生じていた。
3) 治療の開始年齢は最終的な骨格パターンの形成に関与していないと考えられる。

 早期治療の効果があると判断する考えと早期治療を疑問視する結論があることになります。咬合誘導や口腔生育の立場からどのように矯正臨床に適応すれば良いのでしょうか。

 第一番目の、骨格性の反対咬合であっても、積極的に早期治療を行えば治癒できるといった考え方と、真性の骨格性反対咬合症例は早期よりアプローチしても、成長・発育により再発し、矯正治療単独では治療困難とする考え方の是非。と二番の、歯槽性または機能的な反対咬合を放置すると、骨格性の下顎前突症に移行するといった考え方と、この様な場合は、骨格性の下顎前突症が初診時において、正確に診断されなかったためで、遺伝的な素質は矯正治療の有無によっても左右できないとする考え方の是非。
の二つの問題点についてはどのように考えれば良いのかをここで、あらためてディスカッションしたいと思います。

オプション:成長・発育の時期の把握について
 全身の成長・発育の診査では、身長曲線や骨成熟指標が参考になります。
特に、拇指末節骨の場合、日常臨床で常用されているデンタル標準フィルムを使用するため、簡単に骨化癒合現象が把握出来ます。
 ステージE-4 つまり、epiphysisの厚径がdiaphysisより大きく、癒合が3/4以上進んだ状態は思春期成長のピークを過ぎた成長の減速期で、特にアングル分類、III級不正咬合の治療開始時期の判断に重要な指標になります。





 骨成熟指標の中で、拇指末節骨の骨化癒合現象をとらえたもので、図の中のStage E4がepiphysisの厚径がdiaphysisより大きく、癒合が3/4以上進んだ状態つまり、拇指末節骨の癒合終末期を示します。(後藤滋巳:拇指末節骨の骨化・癒合現象の増齢変化について、日矯歯誌 46:534-546、1987.)
 さらに、歴年齢を基準とした下顎骨長(Ar-Me)の成長変化の中で、E4期を基準にして、その前後の2年間の成長変化を表したものが下図です。
(近藤高正:拇指末節骨の癒合終末期での顎顔面頭蓋の成長様相について、日矯歯誌 50:293-302、1991.)
 また、身長の年間増加量と初潮との関係も参考になります。